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キンコン西野亮廣から考える、絵本のフリーミアムは成功するのか?

西野さんの絵本、えんとつ町のプペルがネットで無料公開された件が話題になっています。


このニュースを見たとき、純粋な感想は一消費者としては、ラッキー!西野さん、ありがとう。だった。絵が綺麗でとても気になるけど、ストーリーもわからないしお金を払う価値のあるものなのかすら判断がつかないでいたからだ。一消費者としては喜ばしいニュースだったが、一方でこういうことをするとクリエイターに十分な賃金が払われないといった否定的意見も当然出た。


新しいことをすると叩かれるのは世の常なのか。不当労働にまで話が飛躍していますが、個人的には絵本のフリーミアムはやるべきだと思っています。


無料公開に踏み切ったことでクリエイターの賃金問題が発生するという意見に対し、西野さんはブログでこう記していた。


それにしても、「クリエイターの不当労働」まで絡めてくる輩まで現れた。

いやいや、インターネット上で無料公開した方が本が売れる(結果的に売れた)んだったら、むしろ逆じゃん。
クリエイターさんに入る収入は増えるじゃん。

 
本をインターネット上で無料公開するケースがこれまでにあまり無かったから(いや、『ブラックジャックによろしく』なんかは、とっくの昔から無料公開なんだけど…)、すんなりと頭に入ってきにくいのかもしれないけれど、冒頭でお伝えしたとおり、音楽ビジネスなんかは、今回のモデルそのまんま。」
西野さんブログより引用

おお、音楽業界の話がでてきた。
絵本の話に入る前に少し、音楽業界の話をしましょう。
はい、そうですね。おっしゃる通り、音楽業界はもう何年も前からストリーミングの脅威が大きくなり、特にYouTubeでお金を払わずともフルで楽曲が楽しめるようになって、ここ数年で圧倒的に音楽の無料聴収層が増えています。それに伴い、CD売り上げも激減しています。

もちろん、西野さんの言うように例えばYouTubeで気に入ったアーティストのCDをお金を払って買う、という層もいるわけですが、徐々に若年僧中心にその数は減っていく一方なのです。何故なら音楽はもはや、お金を払うものである、という認識を持たない若者が増えきているから。

下記は日本レコード協会が出している、音楽メディアユーザー実態報告書2015のデータです。

上のグラフが音楽にお金を使うユーザー、使わないユーザーを年代別に表したものです。これを見ると、音楽ユーザー全体で音楽にお金を使う有料聴収は32.9%に対し、お金を使わないけど音楽を聴いきてる無料聴収層は32.5%います。同じくらいかと思いきや、中学生に目を向けてみると有料聴収層が32.9%に対し無料聴収層が41.7%と圧倒的に上回っています。

また、無料聴収層のうち、半年以内にお金を使っていないけど、新たに知った楽曲がある、という層は27.7%と既知曲のみで満足している13.6%を上回っています。

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下の方のグラフは音楽の聴収手段です。圧倒的にYouTubeが多く50%以上のユーザーがYouTubeによって無料で音楽を聴いていることがわかります。

以上のことから、中学生世代の無料聴収層の多くもYouTubeなど無料ストリーミングサービスを使って、新しい音楽と出会い楽曲を楽しんでいる可能性が考えられます。


●音楽業界の衰退はYouTubeのせいか?
こう書くとYouTubeが全て悪いように見えますし、実際音楽業界ではしばしばYouTubeが犯罪者扱いされることもあります。

しかし、ここ数年の音楽業界、とりわけCD売り上げの衰退はストリーミングなどフリーミアムモデルのせいではなく、本質はスマホなどの普及によるライフスタイルの多様化にあると思います。先ほどのグラフを見ても無料聴収層より無関心層のほうが圧倒的に多いのがわかります。

CDの売り上げやばいよ=YouTubeのせいではなく、本質の問題は音楽を聴く時間がライフスタイルの多様化により、他のものに取って代わられているから。

ただし、中学生など若年層に限ってはこれに当てはまらない可能性はあると考えます。彼らは物心ついたときからそばにあるインターネットで、無料で音楽を聴くことに慣れているから、冒頭でも書いたような音楽=お金を使うものではない、という認識が当たり前に生まれている可能性は否定できないのです。


●絵本のフリーミアムは成功する?
以上が音楽業界の現状で、多少なりとも無料で聴けるということがCD売り上げに影響を及ぼしている可能性は書いた通りです。

しかし、絵本の場合だとこれは西野さんが言うように売り上げに良い影響を与えると考えています。ただし、コンテンツが良いものであるということがもちろん大前提です。

わたしが絵本でやるべきだと思う理由は下記。
1.絵本は子供に与えるものだから
⇨めっちゃ当たり前ですが笑 絵本は本来、子供のためにあるものなので、親が子に読み聞かせを行ったり、子が覚えたばかりのひらがなで一生懸命読んだりしています。いくらネットで無料公開されたといってもスマホやパソコンの画面で読み聞かせするということは通常考えられない。ネットで公開して、それが良いものであれば親は結局お金を落とすしかないのです。

2.新しい作品と出会える場があまりない
⇨これは西野さんも言及していますが、本屋にいってもどれが良い作品なのかわからない。ゆっくり立ち読みする時間もないし、そもそも読めないようにビニールをしている本屋も多い。そういう中で、お金を落とす前に中身が知れるという機会はこれまでなかったし、親が新しい作品を探し子に与えたいという気持ちを持つ限り、ネットでの無料公開は結局、販売促進に繋がると考えます。

2点書きましたが、特に理由として大きいのは1つ目です。

子に与えるものだから。が全てですね。
大人がネットで読んで満足して終わり、というタイプのものではないから、良いコンテンツであればあるほど無料公開することで書籍売り上げは上がるはずです。

しかし同じ絵本でも、大人向けの絵本なら意味ないかもしれませんね。例えば100万回生きたねこ。これ、完全に大人向けだと思うのですが、この作品がネットで無料公開されたら意地でも本は買いませんね。

だって自分が読みたいものが無料でネットで読めるのだもの。

自分ではない、誰かに与えるもの、という絵本最大の特徴がこの絵本フリーミアムモデルが成功する背景になると思います。

それにしてもプペル、絵めっちゃきれいでした。
でもストーリーがページ数の関係なのか飛躍しがちなので、西野さん、これ2時間映画にしません?そのほうが書きたかったことが伝わるような気がします。